中国のアニメの感想を書くブログ

中国のアニメの感想を書いています

番外編実写版レビュー: 闘羅大陸(斗罗大陆)実写版~犬を指して龍となす~

原作ファンが納得する実写とは原作に対するリスペクトが感じられることである
リスペクトと言っても様々な考えや方向性があるだろうが、やはり原作ファンにとって重要なのは人物の性格や思想などの内面を変えない事である。
どうしても予算、技術、規制などで実写にできない部分があるのは常である。
それでも、登場人物の内面がそのままであれば大概の原作ファンは納得するものだ。

ではこの作品はどうだったのだろうか

↑テンプレ

原作ファンで実写版を全話見たという猛者のレビュー
「面白かったよ。知っているキャラクター誰一人として出てこなかったけど」

もうダメそう

 

第一話の感想&開始前から……

※実写版1話+α*1、コミカライズを少々、アニメは160話以上見ての感想です。

西洋ファンタジーを無理やり中国風のファンタジーにしたのでビジュアル面でマイナスになってしまうのは仕方のない。それにしてもアニメのゴージャス&セクシーと比べると綿密に作られた生活感のあるビジュアルやセットに嫌な予感がしていたけれども、まさか登場人物の性格と内面の人間性が全然違うとは思ってもみなかった。

原作やアニメの主人公の唐三の人物像は出木杉君とキテレツ君を足したような感じの優等生で大人びていて控えめでどんな困難に対しても肝が据わっていて常に冷静沈着、実は若くして亡くなった孤独な毒と暗器の天才が前世の記憶を持ったまま異世界へ転生し、強い信念をもって唐門*2をこの世界で興す。という設定である。初期は性格も能力も後方支援タイプで異色の主人公なのだ。

実写ドラマの1話は主人公と父親くらいしか出てないのだけれども、この親子は同姓同名の別人だぁ。中国には同姓同名多いからって間違って別人を出しちゃだめだよ。
実写ドラマの主人公は田舎の村に住んでいるごく普通の青年で、冷静さも大人びた雰囲気もない。原作やアニメの唐三ならば魔物が出てきても冷静に力試し、驚いて悲鳴を上げることなどない。原作とアニメではこの時6歳である
中国のドラマで転生者という設定はなくなることが多いにしても、実写ドラマの村人親子は誰なんだ?どっから来たんだ?

内容については、さっきと言っていることが違うな?まあ私の語学力の問題だろう。否定形はたまに分かりづらいことあるからなどと思っていたら、レビューで”登場人物の言う事に信念がなくその場しのぎで変わる。皆頭が悪くなっている”というのを見て、ああ、自分のせいじゃなくてドラマの登場人物の頭が悪いのか……主人公は強い信念をもって生きていて、とても賢いという設定はどこに行ったんだろうか?

以上のように登場人物の見た目も性格も内面の人間性も(ついでに年齢も)大きく違うのだけれども、なぜかストーリーは原作とほぼ同じ流れだ。

アニメと比べるとがっかりすることの多いビジュアル面

先ほど書いた通り原作は西洋ファンタジーである。アニメのキャラクターデザイン&3Dモデルは老若男女問わずゴージャス&セクシーで、都市部の建築物は大陸らしく巨大で豪華絢爛、魔物が住む森はファンタジーらしく見慣れない植物や生き物であふれている。
実写ドラマはアニメと比べると演出、造形、エフェクトなどのビジュアル面が、良く言えば素朴で生活感があり地に足の着いた感じ、悪く言えばしょぼくて貧乏くさくて地味になっている。ただ、衣装やセットはとても丁寧に作られている。BGMはいい感じで場面を盛り上げようとしている。しかし、それはアニメ視聴者からすると”BGMだけ迫真”という感じで空しく響いている。
動画サイトにアニメと実写の比較動画が多数あがってる。いくらなんでも悪意がありすぎるだろうと思って実写を見たら比較動画はまだ笑える部分を比較しているだけだったりする。

www.bilibili.com

この実写ドラマとアニメの比較動画は特に笑える部分だけ比較している。

以下この動画の解説である。

P1の1。巨猿タイタン*3

f:id:lp1mmm:20210923113501j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113510j:plain
実写ドラマでは身長2メートルの雪男?強キャラなのでこの見た目はとても残念。巨体にできないのならば神々しくする等の工夫ができなかったんだろうか。
アニメは山のような巨体で最初に遭遇した時の衝撃と絶望感が強く印象に残る造形だ。

 

P1の2。剣闘羅

f:id:lp1mmm:20210923113518j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113523j:plain

実写ではニヤニヤしている表情豊かなおじさんになっている。たぶん実写だけ見た人は何とも思わないかもしれないがこれもひどい。
原作、アニメ、コミカライズで外見の年齢は違う*4けれども、どの剣闘羅も優雅で高貴な人物で、冗談を言っている場面であっても高貴で素敵だ。間違ってもドラマのような表情はしない。
俳優の人選は良くても造形がイマイチで性格が違い過ぎる。
しかし、個人的には寧風致の方を厳しい目で見てしまった。実写の方はごくありふれた身分の高いお父さんだ。アニメの方は優雅で柔和で善良だけれども住んでいる世界が違い過ぎていつか主人公たちと対立するのではないかという緊張感があった。さらに実写の造形は老け過ぎている。俳優の年齢的に仕方ない事なのだけれども12~15歳の寧栄栄の父親である寧風致のこの時の年齢は40ちょっとだ。原作にもそう書いてある。アニメのエルフっぽい寧風致はこんな感じ

f:id:lp1mmm:20210923114044j:plain
ついでに剣闘羅とは長い付き合いの相棒でライバルでもある骨闘羅は実写ではカットされました。画像後ろで控えているのが骨闘羅。*5

f:id:lp1mmm:20210923120849j:plain

 

P1の3。比比東

f:id:lp1mmm:20210923113532j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113540j:plain

実写ドラマのメイクと衣装が……中の人の普段の外見はとてもいい感じなのになんだこれ。どこかの山で魔教の教主を名乗る怪人くらいの造形だよ。この実写ドラマは俳優が良くても造形でことごとく台無しにしている。
原作及びアニメなどでは本来の意味での「女神」「聖女」といった風格と威厳のある人物である。*6
そもそも比比東はボスキャラなので造形にもっと気合を入れるべき。

 

P2の1。唐昊錘教皇殿

f:id:lp1mmm:20210923113547j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113553j:plain

迫力のなさ!この時点での最強同士の戦いだぞ!冗談かと思って何度か確認した。タケノコみたいな錘を投げてワンパンという適当な感じが……

 

P2の2。菊闘羅

f:id:lp1mmm:20210923113559j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113608j:plain

アニメの方を見てわかる通り原作でも怪しげで妖しげな人物である。なぜ実写は街ですれ違ったら気さくに挨拶してくれそうな造形にしたんだろうか。化粧を濃くするだけでお安く手軽にそれっぽくなるのに。

 

P2の3。黄金聖龍

f:id:lp1mmm:20210923113616j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113626j:plain

これ最初実写ドラマの映像が信じられなかったんですよ。きっとコラ画像で実際は龍なんだろうって。でもね本当にCGの犬(かわいい)が可哀相な感じで敵に突撃しているの!びっくりだよね!動画コメントの「趙高は鹿を指して馬となす、ドラマは犬を指して龍となす」は皮肉が効きすぎている。

 

P3の1。幽冥白虎。

f:id:lp1mmm:20210923113642j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113650j:plain

この場面はアニメの演出が過剰らしい。そうであってもアニメ見てから実写を見ると頑張ったのはBGMさんだけだよ……ってなる。でも白虎のCGはこの実写ドラマの中ではかなりイケてる方だと思う。かわいい。

 

P3の2。柳二龍vs大地之王

f:id:lp1mmm:20210923113657j:plain

f:id:lp1mmm:20210923113705j:plain

大地之王が芋虫になっちゃった。
この後、羽化して襲い掛かってくるとかそういう展開もなかった。
大地之王はちょっと見づらいけれども巨大なサソリです。

 

二度目になるけれどこの比較はまだ笑える部分だけである。そして、この比較動画で全く触れられていない事がある。主人公とその仲間たちに一切触れていないのだ

お前ら誰だ?

私のようなアニメから入ったニワカでも「違う…違う…○○はこんなんじゃない……」とつぶやき、実写1話の主人公と父親を見ただけで首を振りながらこいつはダメだ……健康に良くないぞ……ダメージを食らうほど、触れてはいけない何かレベルで主人公とその仲間たちの内面が違う*7

闘破蒼穹の実写ドラマの父親は確かにコレジャナイ感があり表に出ている性格は違っていてた。しかし、息子を思う気持ちや一族の長としての責任感などの内面の人間性は同じで、オタクっぽい表現でいうと解釈違いだった。
ところが、闘羅大陸の場合は性格も内面の人間性も全くの別人で、解釈云々以前の問題で、同姓同名か似たような名前の誰なのか分からない知らない登場人物ばかり出てくる。本当にあいつらどこから来た何者だったんだろう?
ストーリーをそれなりに原作通りやっていても登場人物の魂が違うとリスペクトが全く感じられない。*8

なお、オチとして実写ドラマが配信された後、アニメのレビューの点数が以前は8.9だったものが、9.4に上がっている。

比較できるものが出来たためアニメの方は点数が上がった。実写ドラマの方は7.5という見えざる何かの意志の働いた数字のまま動いていない。

実写ドラマを見るときの注意点

実写版は11月から日本での放送が決定しているそうだけれども、実写ドラマ版を見る場合は予習としてアニメを見ることは絶対にオススメしないなぜなら心身の健康に良くないからだ。アニメを知らなければダメージを受けることはないが、アニメを見た後に実写ドラマを見るのは自傷行為である。

冒頭の原作ファンで実写版を全話見た猛者がいうには「ニセモノがしょぼい感じで物語なぞってて面白れー(意訳)」と低予算*9クソドラマ感覚で楽しんだよう。私はその境地に達することができなかった。

おまけ

こちらの動画は健康に良いオススメの実写版である。アニメの音声を使っているけれども愛と工夫に溢れていてとても良い。内容はネタバレだけど気にしない。
農村の素人が段ボールで作ったコスプレ動画に迫力負けしているんだよな実写版……

www.bilibili.com

www.bilibili.com

www.bilibili.com

 

アニメと比べた場合の見た目と演出などの差が近い雰囲気の実写版

*1:再生せずにタイムラインのサムネだけ見て、重要な所だけを再生した

*2:武侠物のあの唐門である

*3:本名は二明。森林之王とも。

*4:原作では老人で、漫画ではお兄さん、アニメではおじさん。実写もおじさんにしたため余計にアニメと比べられてしまった

*5:寧風致と剣闘羅と骨闘羅の3人セットで特定の女性層からの人気が出ました。

*6:この時の年齢は50代である。封号闘羅の皆さんは実年齢と容姿が一致しない人が多い

*7:10数年来のファンの怒りを通り越して静かな悲しみのレビューの投稿が多数あり、それによりこの物語の主人公唐三が男性読者からこんなにも好かれていたのだと知ることができたけれども、こんな悲しみに満ちたレビューで知りたくはなかったよ!

*8:それまで最低の出来と言われていた闘破蒼穹はまだましだったという意見が多数見られるようになった。

*9:実際は特殊効果だけで日本円で300億円以上かかっているらしい