中国のアニメの感想を書くブログ

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中国WEB小説初期の4つの流派

 

一つ一つ、簡潔に解説します。ちなみにこの4つ以外にも『○○流』と呼ばれるものはありますが、今回は省略します。

『修真流』

『飄邈之旅(2002年?)』が元祖。以前の記事で書いた通り、飄邈之旅の内容はうかがい知れないので、修真小説についての概要となります。
仙人目指す小説うち、仙人になるまでの階級(段階)が存在する小説のことです。仙人になるのが目的のため、『修真流』には古代風だけに限らず、現代、SFなどが舞台の『修真流』が存在します。
キャラクターの強さが可視化されるため、仙人を目指さない他ジャンルでも階級制を取るものが多く、中国のファンタジー小説に与えた影響は大きいです。

ちなみに、階級制自体は1932年の『蜀山剣侠伝』からの流れだそうです。

『凡人流』

『凡人修仙伝(2007年)』が元祖。修真小説からの分派。
分かりやすい特徴としては、主人公は普通の人であるという事で、『凡人修仙伝』であれば主人公の韓立は貧しい農村生まれの能力も容姿もごく普通の少年です。言い換えれば、血統主義ではないということです
次の特徴としては、『修真流』よりも階級制が厳格であることです。ご都合主義のなんかよく分からない理由で強くなるという事はなく、コツコツと修行して階級を上げなければなりません。そして、階級を上げることが出来なければ、どんなに強い力があっても寿命が尽きて亡くなってしまいます。
そして、世界観が厳しめという特徴があり、特にこれが他のジャンルにも大きな影響を与えました。以前の記事で書いた『いい人から死んでいく系』がこれに当たります。もう少しだけ詳しく説明すると、陰謀と悪意に満ちた世界での人間不信の物語です。*1このあと、色々書いたけれども、ネタバレだと気づいてやめました。
『凡人修仙伝』のアニメはビリビリ動画で10話まで無料で配信してます。しかし、初期はかなり端折っているので、実はどういうものか結構分かり辛かったりします。

『洪荒流』

『仏本是道(2006年)』が元祖。
封神演義』『西遊記』『山海経』『白蛇伝』などや中国神話要素、仏教要素に西洋ファンタジーの体系も取り入れたファンタジーの事です。
しかし、『仏本是道』はとても複雑で難解、著者独自の設定も多いものなのですが、中国神話や仏教にあまり詳しくない者が『封神演義』や『西遊記』の人物が出ているものと単純に理解したり、著者独自の設定が何なのか分からないまま設定を再利用したりと混沌としていて、『仏本是道』と雰囲気の大きく異なる作品も『洪荒流』と称していたりします。ある意味、懐の深い流派となっています。
これは完全に私の独自見解ですが、『仏本是道』は日本の小説レーベルで出すなら今はなき朝日ソノラマだと思うの。*2

『無限流』

『無限恐怖(2007年)』が元祖。
『無限恐怖』について解説すると突然連れ去られた主人公と見ず知らずの人たちが、「バイオハザード」「エイリアン」「呪怨」「ハムナプトラ」「ロードオブザリング」などの映画の世界に入り込み、仲間となってミッションをクリアしていくという内容。ミッションで貯めたポイントをインターバル中に消費して物品と交換できたり、スキルレベルを上げたりできる。*3初回クリア特典で、好きな「生き物」を創造できたりもする。

何故こんなに詳しいかというと、アニメを見たからです。
タイトル変更はよくあることだよ!

www.bilibili.com

アニメを見れば分かるのですが、版権の問題があるので「バイオハザードっぽい世界」「ほぼほぼエイリアン」で物語が進んでいます。エイリアンはそのまんまだったけどね……
この『無限恐怖』は前の記事で書いた通り、現代中国小説の女性向け二次創作で一番最初に流行った作品で、流行った理由としてはバトロワと同じように無限恐怖パロディ(無限流)としての二次創作と、『無限恐怖』そのものの二次創作の2つが同時に流行ったのです。
ただ、アニメについては、そもそも原作通りやることができないのと、『無限恐怖』の女性からの人気№1キャラクター楚軒の3Dモデルがイマイチかっこ良くない、人気の女性キャラもあんまり出番がないなどで、そんなに評価は良くないのですが、私は割と好きだよ。

以前から中国の漫画やアニメで、謎のデスゲーム系が流行っているなと思っていたら、どうやら『無限流』もしくは影響を受けた作品群だったよう。『無限流』は『無限恐怖』のアニメを見るとかなりテンプレとしての力が強いのがわかるので、これは流行るわと思いました。
しかし、『無限流』に詳しい中国語の記事によると、元祖が一番いい出来とは限らないとのこと。

*1:少々ネタバレになりますが、かなり初期に信じていた人に裏切られる。

*2:挿絵は天野喜孝寺田克也で決まりだ!

*3:スキルや物品も有名な作品からの借用だったりする。