とりあえず、有名な作品(抜け多数)
黄色で囲ってある作品は抑えておくべきもので、簡単に説明します。
■誅仙(2003年、蕭鼎[張戬])掲載サイト:起点中文
古典仙侠を総括したと言われている作品。作者が金庸ファンのため強く影響が感じられる。*1
2016年にドラマ化、2022年にアニメ化されているものの、どちらも原作の良さを表現できていないよう。
2007年にゲーム化され、女性プレーヤーが多く女性向け仙侠物の基礎になったという証言が多数ある。
ただ、私が女性向け作品の漫画を読んだりアニメを見た限りでは、誅仙の影響が強いというよりも、それ以外の作品からの影響がとても弱く感じた。
■飄邈之旅(2002年か2003年(2005年に書籍化?)、蕭潜[劉暁強])
修真小説の先駆けとなった作品。
掲載サイトが現在とても見づらく、そもそも正式な掲載サイトかどうかも不明で、ゲーム化はされていても、コミカライズやアニメ化されていないため具体的な内容を知ることが困難。
ドラマ化予定。
■仏本是道(2006年、夢入神機[王鐘])掲載サイト:起点中文
洪荒小説(洪荒流)の先駆けとなった作品。
洪荒流とは『封神演義』『西遊記』『山海経』『白蛇伝』などや中国神話要素、仏教要素に西洋ファンタジーの体系も取り入れたファンタジーの事。
こちらもゲーム化はされているものの、コミカライズやアニメ化、ドラマ化されていない。
あらすじや同作者の『永生』のアニメから察するに、ゲーム以外のメディア化には全く向いていないよう。仏教要素が強いのも関係していそう。*2
※『永生』について
主人公はアニメでは朴訥とした普通の青年になっているけれども、原作では狡猾、陰険ではあるが恩には報いる梟雄的性格。本来は倫理的にアレな面もあるらしく……アニメ2期が始まって、禍々しさと濃厚な「魔」を隠し切れなくなってきてる。ちなみに、アニメでは仏教要素は極力控えめに表現されている。
菩提樹も困惑する素敵なエンディング曲だよ!魔にならないで!悟り開いて!
■凡人修仙伝(2007年、忘語[丁凌滔])掲載サイト:起点中文
凡人流という修真小説の一派を生んだ作品。凡人流は他ジャンルにも大きな影響を与えました。
主人公は農村出身の生まれも容姿も平凡な少年。ストーリーについてはドラマ化されるのでネタバレしないように書くと、いい人から死んでいく系です。
中国の小説や漫画の主人公が狡賢いと言われることが多いのはこの作品の影響が強いため。
なお、凡人修仙伝の主人公は当初は慎重な性格であるだけで、狡猾になってしまった理由は作中にあるので……
2020年にアニメ化され、ドラマ化も予定されている。
アニメがとても人気なのに、全くといっていいほど女性受けする内容ではないため、女性向けの同人作品が異様に少ないという特徴のある作品*3で、ドラマ化で女性向け同人が増えたとしたらドラマ化は失敗したと思って下さい。
見ての通り、2000年代前半から半ばまでには現在の仙侠小説の礎となった作品が出ていたことが分かります。
現在、男性読者想定の仙侠小説が連載されているウェブサイトで大きい所は、起点中文、縦横中文で、起点だけでも日本の少々古い(20年くらい前の)ライトノベルレーベルで例えると、角川スニーカー+電撃文庫+富士見ファンタジア+朝日ソノラマ+αくらいの規模感。*4体感的には起点がWEB小説の6~7割くらいを占めている感じがします。*5
表にある作品で抜けが多数あると書いたのは、掲載サイトが閉鎖したために行方知れずになっていたり、作品自体が忘れ去られてしまっていたりするためです。
2005年の七界伝説はごく最近掲載サイトが閉鎖したため、少し古い記事のオススメ仙侠小説で辛うじて拾う事が出来た作品です。*6
次は仙侠物のゲームやドラマについてサラッと紹介します。
中国では女性のゲーマーが多く、ゲームをする層では仙侠物は人気ジャンルだそうで、今でも剣網3はとても人気があるよう。女性向け作品については男性読者想定の小説に比べるとゲームの影響の方が大きいようです。
日本と同様中国でも、さらに広い層に知られるためにはドラマ化されることがカギになります。しかし、仙侠物で実写化された作品のレビューサイトの点数は10点満点で
『誅仙(青雲志)』6.8
『霊剣山』7.0
『剣王朝』6.3
『雪中悍刀行』5.8
『莽荒紀』に至っては3.1という低さ!
数字が全てではないとしても、どれも評価されたとは言い難い出来。
『塵縁』は2023年7月配信開始のため評価が定まっていないものの、複数の原作ファンによると役者はいいが内容は……とのこと。
仙侠物のドラマの成功例はゲーム原作の仙剣奇侠伝1(2005年)と仙剣奇侠伝3(2009年)だけと言われています。
つまり、仙侠、修真(修仙)ものは本場中国でもあんまり広がっていないジャンルだったりします。ほとんどの人の認識は何となく仙人が出てきたりする中国風のファンタジーふんわりしたものだと思います。*7
なぜこんな事になっているかというと、日本の実写化作品とほぼ同じ理由でクソ改変のせいです。
クソドラマ化への愚痴を長々と書きたかったんですが、ここでは関係ないので止めときます。
最後に、中国の人気WEB小説についてのいい動画があったので2つ紹介します。
こちらは2011年から2021年までの百度のデーターを基にした連載終了作品を含む全てのネット小説を対象とした人気ランキング。
7~8割起点の小説が占めているよう。表の主な仙侠小説の作品も結構ランクインしています。
こちらは起点中文の人気投票のランキング。上のランキングとは違い、作品のリアルタイムでの人気ランキングの変動を動画化したものです。
個人的には逆天邪神が気になる……このクソアニメを凝縮したみたいなタイトルなのに人気があるとか!
アニメ化予定なので楽しみすぎる。